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アンティーク家具修復工房

TEL. 03-5609-2906

〒136-0071 東京都江東区亀戸3-35-2

採用情報工房ノート

はじめまして私は佳秋の工房を主宰しています岸佳秋と申します。このページでは修復家としての私の考えや日々の作業の事などをつれづれに書いていく気楽な読み物にしたいと思います。そしてお客様との情報の交換などを通じて修復と社会との関係がより身近になり未来に繋がるものになっていくことを願っています。ご訪問いただき有難うございます。【日記に掲載される内容はわたしの個人的主観によるもので特定の個人、団体、宗教的なものとは全く無関係な物です】

★質問・リクエストは此方からどうぞ!お待ちしています!★

ピンクウォッシュ
英国 ビクトリア朝(1834〜1900)に流行した家具塗装方法の一つにピンクウォッシュがありますが、この塗装方法はそれ以前には使用されてはいませんでした。

家具は自分以外の訪問者などの第三者に見られる要素があります。目に見える部分は特に美しいのは当然ですがその裏側はそうでしょうか。椅子などの人体系家具をのぞく、家具類キャビネットなどは壁面に押し付けられてその裏側は見られる事はありませんよね、もちろん人の家におじゃまして家具の裏側を覗くなんて無作法はしたりしませんから当然ながら気にする事ではありません。ビクトリア以前、その実体はどんな物だったのでしょうか、皆さんが思うようにあまり美しいとは言える物ではありません。楽屋裏の様な物で人様に見せる物ではなかったんですね、

ビクトリアン以前の家具の裏側は単に板を打ち合わせるかはぎ合わせ、広い面積をカバーし埃や虫などの侵入を防いでいました。当然の事ながら製材された生地のままであったのです。

でも、この見えない場所を見られても良いようにしておくことが必要とされた文化的に成熟した美意識の高い時代の到来を、一見すると意味のない家具の裏板に施された「ピンクウォッシュ」という塗装にうかがい知る事が出来るのです。

では、この「ピンクウォッシュ」塗装方法とはどのようなものなのでしょうか、

原料は、当時建築材料として大量に生産され安価に提供されていた焼きレンガを微粉末にした塗装顔料です。この顔料を亜麻煮油やグルーサイズと混合し裏板に塗布し定着させていました。特にビクトリアン中期に顕著に認めることが出来ます。
ビクトリアンキャビネットを探されている方はアンティークショップでキャビネットの裏側も覗いて見ましょう。買う時には覗いても無作法ではありませんよ!薄いピンク色に染まっていたらそれはビクトリア朝の家具であるサインの一つです。

気をつけないといけないのは故意に作業された物とリアルアンティークとの識別です故意に作業されたものは全体の色合いが濃く場合によっては顔料そのものが支持体表面に残っています。リアルの場合はようやく識別できる程度の淡いピンク色で支持体の導管に入り込んだ顔料だけが残り表面に付着している事は極めて稀です。又、支持体の経年変化と一体となっていますのでよく観察する必要が有ります。



 OLD NAIL
この写真の釘はレイトジョージアンに製作された英国製のオークチェアーに打たれていたもので錆びて木に食い込んでいましたが今回レストアの為に取り外しました。とても小さな釘ですがその錆びた姿は長い年月を木の椅子の中で過ごしたことにより得られたものです。そしてこの釘は椅子に関わる人々の暮らしや歴史的事件を共に過ごし現在に至るのだと思うとアンティーク家具はまさにタイムマシーンだなと感じます。
このような場面は過去に幾度となく経験しているにもかかわらず毎回まるでエジプトの王墓の扉を初めて開く考古学者のような気持ちになり修復に携わる自分の立場をあらためて実感する瞬間でもあります。

今回はこのOld nailについてお話したいと思います。
写真のOld nailは鉄製で釘と言うよりは鋲のイメージに近く鋳造か鍛造で製作されたものかと思われます。
形状は横にしてみると先端が細く後方に行くに従いその幅を広くします。断面形状は四角い形をしています。
釘の性能は打ち込み時の直進性と保持性それと釘自体の鋼製性能(硬いか柔らかいか)などが上げられます。
現代Machine nailは直進性能が良く木の節も貫通します。
Old nailは直進性能、貫通性能において現代ネールに劣ります。
接合保持性能においては打ちたて時と経年後では違いがありますが、経年後においてはオールドネールが勝ると私は思います。それは木に打ち込んだその中での釘の形状変化にあります。
たとえば打ち込んだ先に硬い節があった場合Machine nailは節を貫通するがOld nailの先端は節の硬い部分を避け回り込むように節の後ろ側に抜けていきます。その変化は抜けにくい形状であるともいえますがしかし実はこれが我々の作業を困難なものにしている悩ましい事象でもあります。又、木の中で水分に触れる事で表面が酸化し木の組織に食い込みさらに抜けにくくなり家具や建築施工においては信頼の置ける結束金具となるのです。

このOld nailが使われているのは英国のアンティーク家具ではチューダー朝からレイトジョージアン朝ぐらいまでの作品に多くみることが出来ますがヴィクトリアン朝に入るとMachine nailに変化していきます。
この変化は家具の製作技術や機械による生産技術の向上によるものでOld nailを生産現場から遠ざける事になりました。

現代の家具や建築は構造や金具を表に出す事を嫌いますがこれは生産技術のイノベイションと消費者の要求に沿った結果です。
しかしアンティークはこれらの技術的欠点をあえて見せることでデザインと機能の両方のバランスを上手く両立させる事に成功させていることに驚くと共にその美意識が我々と共通する点を持っていると感じるのは私だけではないと思います。

この視点で見ると釘は結束する役割が最も重要ですが壁や荷物の梱包木枠に無造作に打たれている釘が特別に装飾性を意識していないにも関わらずこれらのものに特別の表情を与えている事に目を奪われる事があります。
釘はそのもの自体には装飾性はありませんが整列したり集合したりすることで違った表情を見せてくれのが面白いですね。
Old nailのその潰れた釘の頭も黒光りするその鉄の肌も古い木材と一体となって一の形態をなしているそんな姿を見る時、ああ、そうそう、これが良いんだと腑に落ちる気がします。それは経年変化による力だけでなくその素材力に由来するのでしょう。

私は仕事として過去に作られ現代においても愛され続けている家具を取り扱っています。
日々の修復作業の中で過去の工人の技術力と美的意識の高さを実感しています。
当然のことながら彼らは彼らの時代に手に入る素材と加工技術で家具を製作しました。そして、その最高峰が今、目の前にあるこれらアンティークであると言えます。
家具の一材料であるOld nailの機能や美しさは実は時代が生んだ偶然の物であるかもしませんが機能的で使いやすく無駄の無いシンプルな物はその使用効果だけでなく美の領域に至る事の出来る素材に成りえるのだと私達に教えてくれているのでした。

  お家でできる簡単メンテナンス
アンティークファニチャー オーナー様の悩みの一つにメンテナンスがあると思います。今回はお家でできる簡単メンテナンス方法をお話したいと思います。
個人で出来る日常のメンテナンスで重要なのは外装を美しく保つ事かと思います。
アンティークファニチャーの塗装にはセラック樹脂、Wax、Oilが代表的です。
これらの塗膜の保護に有効なのが家具用固形Waxで取り扱いも容易です。
Waxを使ったメンテナンス方法を覚えて美しいアンティークファニチャーをより美しくしてくださいね。(今回は固形ビーズワックスの取扱法は除外いたします)

家具用固形Waxのメーカーには幾つかありますが私が使用しているメーカーはMYLANDS(UK)・LIBRON(UK)です。
容量は250〜500ml、価格は日本円で1000〜3000円位です。
カラーはクリアーから各家具材料色が用意されています。
入手方法はホームセンター、輸入家具販売店、アンティーク家具販売店又はUSAのGarrettWadeなどのウッドワーキングツール通信販売会社からご購入されるとよいかと思います。

さて、これから作業を行うにあたり材料を用意しましょう。まずは使い古したコットンTシャツ(切り開いて使いやすい大きさにします)、ブラシ(靴磨き用でOK!)、スチールウール0000番(塗料店で入手できます。価格は2千円位)バケツ1杯の水、以上です。

作業工程はたった3工程、@洗浄AWaxの塗布B吹き上げ、これだけです。では作業工程ごとに進めてみましょう。

@洗浄
家具の全体にブラシを掛けて埃を払います。
クロスに水を含ませ硬く絞ります。
クロスで全体を軽く拭き上げます。
汚れの強い部分が見つかった場合は再度軽く拭き上げます。
この時、汚れが取れないからと言って強く拭くことは絶対しないで下さい。
場合によっては古い塗装が取れてしまう場合があります。注意してください。

AWaxの塗布
最初に目立たない場所で試し塗りをして塗装面の変化を確認しましょう。その後広い面に施工します。クロスかスチールウール0000番にWaxを少量、取り塗布面に薄く浸透するように広げていきます。この時広い面積を一気に塗ろうとしないいで小分けして塗り広げて行きます。
Waxの塗布量はそんなに多くはありません。この工程ではWaxを厚塗りする事ではなく少量を薄く小さな円を描くように塗り広げるのがポイントです。

B拭き上げ
Waxの塗布後15分〜1時間位放置して溶剤が揮発したらブラシで磨きその後に乾いたクロスで磨きます。再度Waxをかけたい場合は12〜24時間後に再度ABの工程で行います。

使用するWaxの色の選択ですが基本はクリアーです。
メーカーによっては木材の種類や時代別にステイン入りのWaxが販売されていますのでご自分の家具の材料が解っている場合はこちらを選ばれると軽いスクラッチなどはステインが入ることで目だ立たなくなりよりいっそうWax効果が上がります。
Waxがけが終了した家具は美しいしっとりした光沢を得ることが出来ます。それだけではなく古い塗装を保護し色あせや軽い擦れなどから守ります。
1回Waxをかけると環境によっては数ヶ月そのままで大丈夫です。
次のWaxをかけるタイミングはWaxのかかった状態を覚えておき全体を眺めた時に光沢が失われ白っぽく見え始めた時です。ご自分のアンティーク家具の魅力を最大限引き出す為にタイミングを逃さずメンテナンスをされるのが良いかと思います。
こうしたメンテナンスを行うことで家具の状態や細工など今まで気づかなかった事に目がいくようになりより深くその家具の存在と魅力を理解することができます。
家具のサイズや個数によりメンテナンスにかかる時間はちがいますがWaxによるメンテナンスはそんなに大変なことではありませんのでトライしてみてくださいね。

 コンディションとレストア
アンティークファニチャーのコンディションとレストアについて考えてみます。
私達人間と同じように家具にも個別の状態があります。
人間ならば誕生時を基点として徐々にコンディション曲線が上昇し頂点に達するとやがて下降していきます。
アンティークファニチャーの場合は生産時が頂点で時間の経過とともに下降していきます。
ではコンディション評価の対象となる点はなんなのか検討してみましょう。
アンティークファニチャーの構成要素は木材・金物・磁器・塗料などで構成されています。
主要構成要素である木材は生命活動を停止した植物性細胞の集積されたもので金属や磁器などと比べてはいけないがその経年劣化する速度が速いのでコンディション評価の中心となります。

劣化は生産時を基点とした場合右肩上がりの上昇曲線を描きますが使用状態や設置環境によりその上昇曲線の傾斜は変化します。
家具も野菜のように地産地消が理想ですが家具は生産後移動する事が求められますのでより生産地に近い環境が好ましいのは言うまでもありません。
しかし現実的にはそのような環境で維持管理するのは大変困難な事ですのでなるべく気温や湿度変化が少ない環境で使用されていた家具がコンディション良好の条件になります。
家具は言葉が話せる訳ではありませんからこれらの設置環境条件はその家具の来歴などから推測し現状と比較しながら評価しましょう。

環境には生産時の生産環境も含まれます。生産方法や使用材料が不適切であったために後年ダメージが発生する場合もあるので使用材料や構造など注意深く観察して評価する必要があります。又、生活で使用する過程においての摩耗や損傷、生活上の改良などで形状が変化してしまったものなどもチェックします。

長い時間を越えてきた家具はその過去に何度かレストアをされている場合が多くあります。
レストアに対する評価に関してはレストア自体をマイナス評価する向きが日本ではありますが私が学んだ英国ではそうではありませんでした。
これはアンティークに対する文化的認知度の差であると同時に日本でのオリジナルを重視するアンティークファニチャーの紹介のされ方が間違った感情を発生させているのではないかと思います。

オリジナルを重視する事に重点を置いたばかりに必要な処置がされずに崩壊していく家具が多いのです。
レストアするタイミングを逃した家具は見苦しい姿を皆様にさらしてさぞかし辛い思いをしているのではないかと思います。
レストアは適切に施工されていれば評価を著しく下げることにはなりません。

レストアに関する評価で問題にすべきは不適切な処置をした事によって家具にストレスを与えている事例です。
過去においても現代であっても修復の際最も注意すべきは修復対象に対してストレスを最小限にし効果的な修復方法を選択し施工するのが基本なのでそこから外れた処置がされている場合のみ評価を下げます。

レストア技術と材料に関する評価に関しては修復施工者のアンティークに関する知識や施工技術に負うところが多いかと思います。
施工にあたり施工技術者は時代考証を無視して行うことは間違いの元になりますので十分な歴史の知識と理解そして古典技法の修得と施工が必要な事は言うまでもありません。
まずは適切な施工方法と材料の選択がされているかを評価します。しかし我々は今を生きる以上現代に存在する材料や技術を使用して修復を行っています。
修復技術・材料は日々進化していますが新しい技術や材料はその安定性や耐久性が十分に証明されていません。これらの使用に関しては十分に注意していかねばなりません。だからといってそれを理由に採用することなく古典技法だけにたよった修復がされたものは時代要因を複雑にしてしまいコンディション評価に影響を与えますので施工技術と材料の新旧のバランスを取りながら第一に修復対象物に対するストレスを最小にした適切な施工をされているかを評価するのが望ましいのではないでしょうか。

修復はいつ修復が行われたのかを証明できるものでなくてはならないと考えます。それを証明するのは材料であり施工技術です。
誤解を恐れず言うのであればレストアは時代を証明する一要因になるものであります。
アンティークはこの時代に至るまでその時々の修復技術で修復されてきた事実を私達は日々修復現場で見てきているのです。
けっして時代考証をごまかす為の技術であってはなりません。

良く修復されたアンティーク家具は美観も優れ使用においても快適性を維持しています。
適切なレストアをうけコンディションを良好に保っているこれらをマイナス評価として扱うのは間違いではないでしょうか。
英国ではこれらの良品をミントコンディションと呼んで最上のコンディションで保存されているオリジナルの次に評価しています。
オリジナル性だけを重要視することがこの様な良品の立場さえも危ういものにしてしまっています。
コンディション評価にあたりこれらを念頭においてアンティーク家具を選んでいただけるとより多くの良品が皆様によって次世代に受け接がれていくのではないかと期待しています。

 アンティークハントに出かけよう!
アンティーク家具を購入しようと考える時、何を基準に購入決定するか考えてみたいと思います。

私が個人的に購入する場合は@使用目的(部屋との相性)AデザインBサイズC色(使用材料)DコンディションE来歴F価格、これらの要素を総合して検討します。又、購入のさい販売担当者からのアドバイスも重要です。

これら要素の順位は個人により違いがあるのでお店に行く前に優先順位を決めておく事が大切です。
判断が付かない場合は第一印象をその判断基準の第一番に持ってきます。
デザイナース家具の場合は@真贋AコンディションB価格、の順序です。

特にデザインは人に与える影響が大きく全ての物がその人の美意識によって貫かれているものです。この美意識に良し悪しはありませんし他人と違うことを意識する必要もありません。自分が心地よいと思う物を選んでください。

家具は木質系材料で作られている為、天気により状態が微妙に変わります。ドアーなど可動部は開閉に影響が出る場合がありますので雨の日はコンディションを知るのに良いですし曇りの日は家具の本当の色を確認するのに最適です。

そうしてあなたの元にやってきた家具はあなたの役に立つ為に日々その機能やデザイン美を日常の中で発揮してくれます。
使って良し、眺めて良し、そんな家具に出会うことは人生を豊かなものにしてくれると思います。

アンティークハントは実に楽しいものです。街には色々なタイプのお店があり取り扱う家具の年代や種類もそれぞれ違いますし各ショップには家具が好きでしょうがないショップアシスタントやお客様が集まってきます。買わずともアシスタントやハンティングをしている方とお話をしてみてください自分の嗜好や求めている物が何なのか知る機会になります。

週末に自分の好みに合ったお店で家具を捜して回るそんな素敵な時間を作ってみると楽しいですよ。


 糊について
糊は私たちの生活において広く使用されています。
どのような生産品でも部品レベルで考えれば必ず使用されていると言えるでしょう。
家具で使用される代表的な糊は現代では酢酸ビニル樹脂エマルジョンやニトロセルロース・フェノール樹脂・メラニン樹脂・ユリア樹脂・ウレタン樹脂・エポキシ樹脂・膠などが有ります。

現代木工家が最も多く使う糊は酢酸ビニル樹脂エマルジョンです。この接着剤は乾燥速度・接着強度の点から使い勝手がよいので多く使用されています。以前は接着剤に含まれるホルムアルデヒドが原因でシックハウス症候群の方に対しアレルギー因子となっていましたが現在はこれらを取り除いたものを使用するようになっていますので日本産の家具は安心して購入することができます。(家具の構成部品に外国製がある場合は日本の環境安全基準を満たさない可能性もありそれらを使用した物は注意が必要です)

西洋アンティーク家具に使用されている糊は一般的には膠(にかわ)です。(船舶などの水に接する場所ではアスファルトなどが使用される場合があります)
膠は豚や牛などの皮や骨などから抽出されたゼラチンで作られます。このゼラチンは水溶性で熱するとゾル化し冷やすとゲル化します。又、使用する動物性材料の種類によりその接着力に差があります。家具には前出の物を使用しますが額縁などに使用されるジェッソには比較的接着力の弱いラビットスキンをつかいます。又、ゾル化させる際水分の混合割合を調節することにより固形化時の硬さを自在にすることができ使用目的にあった硬さを自分で調整できる点でもすぐれています。

使用時の問題点はゾル化した状態で高温多湿の環境が長く続く場合、腐敗しやすい事です。このような環境や時期には早く使い切るか、使用量分だけを作る様にすると良いと思います。腐敗した糊は接着強度も下がりますので使用しないほうが無難です。
接着後、乾燥した膠はゾル化時と同等の条件にならない限り再溶解したり腐敗する事はありません。(アルコールや有機溶剤などの浸透やガスに暴露されている場合を除きます)

膠は接着後、木材に対し高い接着強度を保ちます。(経年変化による強度の劣化は当然起こりますが化学合成樹脂の糊と比べた時その劣化の速度は緩やかであると思います)これは100年以上もの時間をかけてアンティーク家具自身が証明しています。

膠の形状は棒状やビーズ状・紛体状など様々です。私が現在使用しているのはビーズ状のものです。固形化している状態では膠は無味無臭です。使用時はアンモニア臭がしますのでこの手の臭いが苦手な方やアレルギーをお持ちの方は使用を避けたほうが良いでしょう。

使用するには膠と水(冷水)1対1の割合で混合し膠が十分に水分を吸収して柔らかくなってから膠専用のポット(電気式と湯せん式の物が有ります)で溶解させます。溶解後はすぐに使用することが可能です。
接着時にはみ出したり手に付着した場合はお湯で拭き取ってください。温めたお湯で容易に取ることができるので作業物にもダメージを与える事が少ないかと思います。

アンティーク家具の古い膠を外す時は水蒸気を患部にあてると容易に外す事ができます。
使用する場所によって安全な作業方法を選択しながら対象物にストレスを与えないように作業してください。

膠は初期接着強度が高く早い段階で組み立てをする事ができますが完全に接着するには数日間(2〜3日)が必要です。又、より高い接着力を必要とする場合は結束道具を使用して固定する事をお勧めいたします。
膠はアンティーク家具の組み付けや装飾製作に欠かせないものですのでその使用方法をよく理解している必要があります。
アンティーク家具の修復では必要不可欠な材料であると言ってよいでしょう。

 道具と工具
道具と工具

一見、両方とも同じ意味のように思いますよね。
実はこれが違うのです。

わたしが仕事をしているウッドワークの世界ではこの違いは常識的な事ですが一般世間ではこの違いに関してあまり意識されてはいないのでは?と思いまして書いてみました。

道具に関しては多くの諸先輩が素晴らしい書物にしておられるので、深く知りたい諸兄はそちらを当たられるようお願い申し上げます。

日本で道具と言うと、自分専用に仕込んだ物をいい、工具と言えば使用するにあたっての準備なしにすぐに利用できる物を指しています。

英国ではWOOD WORK HAND TOOLと、だけで表現していて道具と工具の区別は無かったと思います。
購入する時も、日本の道具屋さんのような木工に特化したお店は有りますがそんなに多くはありません。普通は金物屋さんで色々な物と一緒に売られている物を買います。
そしてほとんどのものが購入後すぐに使用する事が可能で、その意味においては工具であると言えます。

そう考えると道具が主体となっいている日本は買う段階から使用するまでに踏むプロセスがつくづく礼、儀、態の文化であると思えてきます。
そんな日本においても道具の工具化が進んでいます。
たとえば、鉋(かんな)、これは木の台に金属の刃を固定して木材を削る物ですが、この金属製の刃が替え刃式になっていて切れなくなったら交換するものに変化していますし、鋸(のこ)これに関しても同様です。現代では実ににイージーなのです。
作業の流れを止めることがなくて済むので外での現場作業者には向いていますが切れ止まるのも速いのです。

古典的な日本の木工道具は仕込みと言われる使用する前の準備が必要でこれが終わらないことには仕事に入れないのです。
これらは手間が多いですが正確に調整された道具は使い勝手が良く、刃が良い物であれば永切れしてほぼ一日中気分よく作業する事ができます。
これは良く手入れをされている事を前提としていまが、いずれにせよ我々の要求に十分に応えてくれることは確かです。

私は日本の道具が一番だと主張したい訳ではありません。
西洋の道具でも素晴らしいものがたくさんあり私もその恩恵にあずかっている一人です。
私たちが道具に求める事は良く切れ、加工物の仕上がりが良い、それに尽きるのです。
そのように言うと、どの道具を使用しても結果がよければ良いではないかと思われるかも知れません。
しかし私たち人間は素晴らしい感覚的能力を持っていて自分が目の前にしている家具が機械的に大量に作られた物か工人が吟味して作った物か見分ける力を持っています。
この両者を並べて比較した時やはり優秀な工人が最良の道具で作り出した物は細部まで気が配られ、美しく、人に優しい仕上がりになっている事を感じることができます。
道具の選択と加工技術が良い関係である場合やはり良い結果が得られるのです。

私たち工人は作る物に対して責任があり最終的にお客様に使っていただく為に作っています。
使われる方の満足なしにはその存在意味はありません。
その満足の為にはそれにふさわしい仕上がりでなければならず、それを可能にするのが良くメンテナンスされた道具なのです。
良い道具は工人の最良の協力者なのです。
この友を最高の状態に保ち最高の仕事を共に成し遂げる為には、その能力を最大限にする準備やメンテナンスが必要なのです。
このように日本の道具は使用する工程の段階において使用側に健全な精神性を持つ事を必要とする要素を多く含んでいるのです。
この点が道具と工具の違いの原点ではないかと思います。
道具は日本の武道に近い概念を持ち、工具は機械文明の発達に伴う概念なのです。
私は西洋の家具を中心に修復業を営んでおりその文化の中で生活してその家具が生まれた国の空気を吸って木工を学んできたので片方を良くして片方を悪く思うことができません。
どちらも素晴らしいのです。
ただ私は日本人としてこの国の木工文化の中でこうして仕事をさせていただけていることに心から感謝し愛しているのです。

この国の工人の作り出す使い勝手がよく、さらに美しい全ての物がどの文化的背景の中でも十分に人々の役に立ち精神的な安らぎと美を提供している事を日本の皆様に知っていただきたいと思いますし、それを可能としている道具の存在を知ればより家具の楽しみを感じていただけるのではなかと思っています。
皆様が家具屋さんで美しい家具を見たり、購入を決める時に工人が道具を駆使してその家具を作っている姿を思い浮かべてみてください。
もしその姿を思い浮かべる事ができるのならきっと、その家具は長い時間を経てもあなたを魅了し、あなたと供に人生を歩むことができるでしょう。


 ウッドワークハンドツール
家具が出来上がるまでには多くの過程を経てくるのですが、今回は家具を作る時に使用するウッドワークハンドツールについて考えてみました。
西洋代表には英国、そして東洋代表として日本とに分けてウッドワークハンドツールを比較してみたいと思います。
ウッドワークハンドツールの主な用途は、切る、削る、彫る、打つ、計る、マーキングする。ですが、この中で削る、の代表的な鉋(かんな)を例にとってみます。
【道具を使う時の動作】
西洋鉋は自分の前方向に押して使います。
日本鉋ではその反対に引いて使います。
【使用感】
西洋鉋は初動時に多くの力を必要とします。
日本鉋は初動時にそれほど力を必要とはしません。
どちらも初動後は慣性力を利用しますが日本の道具のほうが体重を移動する時に生じる慣性力をより効率的に利用していると使用体験から言う事ができます。
【構造】
西洋鉋は木製・金属製の本体に金属性の刃物を固定し本体を移動させる事で切削し木屑を排出口より排出します。
日本鉋は木製の本体に金属性の刃物を固定し本体を移動させる事で切削し木屑を排出口より排出します。
刃物の取り付け方向は本体の移動方向に対して相対する点では同じだが並べて比較した場合、西洋鉋と日本鉋は刃物の取り付け方向が逆に付いています。(写真参考)
【道具が人に与える影響】
次は道具が人に与える影響についてわたし自身を例に考えて行きたいと思います。
私が木工を英国で学び始めた頃、西洋式の道具は初めてで、その取り扱いに戸惑いがありましたが1年も経つと体が慣れてきてそれはたいした問題ではなくなってきました。
ある日、コーチにだいぶ我々に近くなってきたなと言われたのです。
そう言われても自分で意識して作っている訳ではないのでその様には思えませんでした。
それから数ヶ月してエジンバラ大学で師であるアンセルム・フレーザー先生が講演会をする事になりその手伝いをする為に同行しました。
その時わたしの制作した物を題材として取り上げてくれたのです。
講演の内容は環境が文化に与える影響についてでした。
異文化の工人が作る西洋家具は彼らから見て西洋家具といえるのか、
その問いかけはやはり興味深いものとなり活発な意見の交換がおこなわれました。
多くの意見は文化的背景の違う工人が作る西洋家具は西洋家具とはいえない、という意見が大半でした。
そこで師がわたしの作品をその人々に見せてこう言ったのです。
この作品から異文化的なものが一部分でも発見できましたか?
多くの人は無言でした。
師はわたしがこの作品の作者であり日本から西洋家具を学びに来たことと告げました。
この講演で得たものは環境により人は変わっていくものであると言う学びでした。
その後あらためて自分の作ったものを見返すと自分で作ったにもかかわらず別の物に見えました。
道具の違いを意識せず自由に使えるようになると、その体の現象と比例するように物作りに違いが出てくるようになりデザイン、木取り、加工方法、など多方向にそれは広がりを見せ始めていました。
この現象は道具の違いが人に与えた影響なのだと思います。
自分は東洋人なのだから本当の意味では西洋家具を理解するのはむりなのではないかと言う考えは少し違っていたようでした。
道具が人に与える影響について体験として人は体の動かす時の所作が思考に強く影響を与えているものだと気づきました。
現在の私は、ほとんどこの事を意識することなく両方を使っているのでハイブリッド化されているのかもしれません。
いずれにせよ人は環境に強く影響を受けて物づくりをしているのだと体験を通じて理解したのでした。
上記の事をふまえて西洋と東洋の道具に関する環境の違いにもう一歩、踏み込んでみる事にしましょう。
道具が人に与える影響は理解できたとして、その道具はどうしてそのような形や使い方になったのかその背景は何なのかを知る必要があります。
道具は必要に応じてその形や機能を持ちますがその要素はそれを作る人の思考(考え方)により左右されるのではないかと思います。
では思考はなにによって形成されるのか?
それは多くの人に影響を与える物でなければなりません。
一時的に影響を与えるだけではそれはブームでしかありません。
永く強く人に影響を与える物の例としては言語、宗教、哲学、思想、政治、自然、がありますがこの中でも全ての人に影響をおよぼすのは自然の力以外には思いつきません。
自然が人に与える強大な力に我々は従わざるをえずその影響下で生きています。
この事実が道具に与えるもう一つのエレメントです。
暖かい地域なのか、寒い地域なのか、この条件が人々の暮らしや思考を変化させる重要な要因になるかと思います。
私が木工を学んだスコットランドの気候は年間を通じても気温が低い地域で冬の時期の寒さはなかなかどうしてすごいものがありました。
外に停めてある車は凍りつきキィーさえ穴に差し込めず、素手で触ろうものならくっ付いてしまいます。
寒さに耐えて家の中で作業をしながら春を待つのです。
彼らにとって自然は驚異であり場合によっては命を奪い取るそんな存在であると感じます。
ですから彼らはこれらの困難を克服するべく開拓により土地を改良し、より快適にくらせるようにしなければならないと考え、自然に対して対抗し自分たちの生活を守りデザインしていくのが彼らの自然に対する基本的なスタンスなのでしょう。
それに対し亜熱帯地域に属するわが国では台風や地震、津波などの強大で破壊的な自然の脅威はありますが毎日ある訳ではなく比較的温暖で暮らしやすい地域に暮らしています。
そして多くのわが国の人々は移り変わる季節に寄り添い自然の驚異さえも受け入れながら暮らし自然に対して一歩、退いて物事を考えるスタンスを基本としています。
押し切る道具を使う開拓者精神を持つ西洋と、引き切る道具を使う一歩引き下がって受け入れる精神を持つ我が国、この自然に対する考え方が道具の形や使い方の違いに反映されているのではないかと私は考えています。

 アンティークを持つという事
アンティークを持つ事、それ自体は単なる物とお金の交換であり経済活動です。
ではなぜそれがその人にとってアンティークでなければならなかったのか?
アンティーク購入者はなにをもって購入判断をしたのだろう。
その購買により得るものは一体、なんでしょうか?
私はそこに美の存在を感じています。
人は太古の時から現代に至るまで生活の中に美を必要としてきたのです。
即物的に考えれば人の欲求は衣食住性の欲求がみたされれば良いはずです。
しかし我々は美術館や映画館、劇場、コンサート、アンティークハントに骨董市に足蹴く通い多くの満足を得て家路につきます。
この事実は我々の生活には美なる存在が必要である事を物語っています。
人は美なる物で心を洗浄し、満たして生活の活力としているのです。
それがどのような形態、表現方法であろうと問題ではないのです。
作家ものでも、工業製品でも、大いなる美の意思にふれた生産物はそれ自体が美のエネルギーを持ち形態化されるのでそれを必要としている我々は引き寄せられるのです。
それらを手に入れ、愛で、使い、感じ、心から理解するとその記憶が人々の深層心理に定着しその人の美意識を形成していきます。
そして多くの経験を経て新しい美の発見の旅へとその人を連れて行くのです。
アンティークは時間によって篩いにかけられ、さらに人々の愛で磨かれ成長していきます。
その成長は終わる事なく永遠です。
どの時代においても失われることの無い美の記憶です。
そして我々は繰り返しその中に新しい美をみつけます。
ゆえに人々はアンティークを愛し求めるのでしょう。
アンティークを持つという行為は永遠なる美の意思を手に入れ精神世界を満ち足りたものにする事で生活をより豊かにする手段であるのではないでしょうか。

  VENEER(ベニヤ)の起源はいつ頃なの?
私達の使う家具や建材には多くのベニヤが使われています。
このベニヤ、いつごろから使われたと思いますか?
なんと古くはエジプトで王様の家具や部屋の壁などに装飾のために使われたと本で読んだ記憶があります。
これらはシリア、レヴァノン、イーストアフリカから運ばれて,
材種としてはシダー、サテンウッド、エボニー、アッシュ、ビーチ、ボックスウッド、エルム、メイプル、オーク、パイン、プラム、ユーなど多種にわたるものだったようです。
壁に貼るといってもなんの糊で貼ったのでしょうか?
糊には動物性、植物性、鉱物性がありますがいずれも天然で手に入る物だったんでしょうね。
最初にこれは何かに使える!と思った人すごすぎです。
きっとそのべとべとは感覚的には不快なものだったんじゃないかな。
発想の転換がその人の頭のなかで起こったんだねきっと。
そんなこんなでベニヤを糊で家具や壁に貼ったらなんか綺麗じゃないかって事でやってみたんだね、きっと。
などと作業中に思いながら糊をぺたぺた塗っていたらエジプシャンのクラフツマンになって作業している自分を想像してしまい不思議な気分になってしまいました。
エジプシャンのクラフツマンと現代の我々のやっている事はたいして変わってないよな〜

  ウイリアムモリスの言葉
今回は皆様にウイリアムモリスの言葉をご紹介します。

『もの作りは、道徳の質をその作品の基本とする』

この言葉は以前にシェイカーファニチャー復元で有名なアリスファーム主宰、藤門弘さんの著書の中で拝読したものです。
このウイリアムモリスの言葉を活字で見て以来、心に取り付いている言葉なんです。
これは物作りにたずさわる者の心持に関して説いたものです。
この心持を信条として生活をすることがクラフツマンとしての幸せでありその生産物を受け取っていただく消費者に対しての責任であるという意味だと解釈しています。
私もそうですが時として自分の思いや考えを押し通そうとしてしまいがちです。
自分の考えを主張する時それが自分自身だけの為の身勝手なものになってはいないか計るツールとしてこの言葉はとても有効なんです。
この言葉の天秤にかけた時、自分の方に傾いたらそれは作っても消費者の方々には受け入られることはありません。
詰まるところそれは必要の無い生産物という事になります。
私たちクラフツマンは消費者のお役に立つものを作るのが使命です。
自分の理想とする生産物が消費者の欲するものと同じであればそれが一番幸せなのです。
生産物は製作者の心が具現化したものです。
心持の良い生産物は美しく飽きがこず長くつかうことができますが、心持の悪い生産物は不快であり長く使うこと無く買い替えられてしまいます。
同じ材料を使ってもまったく別のものができてしまいますのでこれは資源の無駄でもあるともいえます。
かといって大量に生産される製品を否定するものではないのです。
少量生産品が良いという事でもありません。
多くの消費者に受け入られているものはどんな物でもそれは正しいのです。
ウイリアムモリスのこの言葉が私たちに語りかけているのは常に消費者と共にあるために生活の基盤となる正しい道徳を身に付けることが大切なんだと語りかけてくるのです。

 同じ、じゃないよ!
写真はベニヤとプライウッドを比較した物です。
ベニヤ(veneer)と聞くと何をイメージしますか?安い感じ?それとも高級なイメージですか?それとも固い板状のもの?柔らかいぺらぺらの物?
木工や建築関係者であればすぐに突き板だよなって答えますよね。
一般のお客様は普通よくホームセンター資材売り場で見かける積層合板(plywood)を連想しちゃいますよね。
意外とベニヤってワードはあやふやなところにあるんだな〜と思って書いてみました。
日本のアンティーク家具の世界でも同じ様にその違いが判然としない状態で受け入られている様に思います。
西洋アンティーク家具によく見られるベニヤードファニチャー、これはベニヤを基底材(パインやオーク材)に張った家具を指していて高価な物でした。
なぜなら旅行が一般的でなかった時代、見ることの出来ない東洋などの珍しい木材を家具に貼り付けて楽しみ珍重していたのです。
けっして積層合板を多用した現代消費家具の事ではないんですよ。
修復時にベニヤの話をするとお客様が自分の家具はアンティークではないの?って聞かれるのです。
説明すると解ってくださいますがなんとなく不安げなんです。
これってあんまり良い事ではないですよね。
やっぱり良く知ってもらいたいなって、思ってご説明さしあげています。
修復で使用されるベニヤは厚み0.3〜3_で時代の古い物やテーブルの天板などには1〜3_を、その他の場所には0.7_を使用しています。
ベニヤになる木材は特に木目や色などが珍しく美しい希少性の高い物が家具や内装などに使用されています。
又、そうでないものは建築材料(plywood)となって私たちの生活を快適なものにしてくれています。
どちらも使用目的別に生産されていています。
ベニヤに良し悪しがある訳ではありませんが区別があるので同じ、じゃないよ!と言うお話でした。

 材料
写真はアールデコ期の椅子でバックスプレットの交換をした例です。
修復施工にとって欠かす事の出来ない材料のお話をしたいと思います。
修復材料の調達は仕事の重要な部分で仕上がりに大きく影響が出るため慎重に行い、多くの情報と現物確認が求められます。
私の場合、木材以外は海外から個人輸入でほとんどを補っています。
しかし木材は大きさ、重量、税金、輸入コスト全てが個人で行うには額が大きくてできません。
そこで日本国内で探すことになる訳ですがわたしの工房は材木の集積地木場が目の前という好条件にあり大変にお世話になっています。
しかし唯一手に入らない木材があります。
それはヨーロピアンウォールナット、19世紀に入り英国、ヨーロッパで多く使用され、一時代を築いた家具材料です。
赤味がかって薄いグレーで目が細かく加工面が滑らかで板目に良い表情があり美しく、彫刻にも適し、家具材料としてこの上ない材料であります。
現在、日本で手に入るウォールナットはアメリカンブラックウォールナットです。
前者に比べると赤味が強く19世紀〜20世紀前半までの家具に使用すると多少の違いが出てきます。
気になるとそこばかりに目が向いてしまい触りすぎてバランスを崩します。
そこで私のする事は木取りの際、修復対象に取り付けた時に修復部分に光があたるとどのように見えるかを考えます。
木材は製材の取る部分により色々な変化があるので目的に近い部位を探し出し製材面に色々な光源をあてて見てベストな物を選びます。
その後、塗装で全体のバランスを整え修復の目的を達成します。
本来ならヨーロピアンウォールナットを使えばよいだけなのだが今はいかんともしがたい現状であるので日本仕様と言うことになるのだが・・・・悩ましい。
これからも材料さがしは続きます。
良い情報が御座いましたらご一報ください。よろしくお願いします。

 修理と修復
修理と修復について考えてみました。
一般的には両者の違いはあまりないように思われています。
修復施工者としてはその差はとても大きいのです。
簡単にいえば修理は機能の回復、修復は復元可能な保存といえるでしょう。
では、なぜ区別しようとするのかそれは対象物の歴史的重要性に着目しているからです。
施工者は自分の立場がどこにあるのかをよく知っていなければいけないと私は考えています。
主役は今、自分が向き合っている修復対象物なのです。
私たち施工者はあくまで一時的に対象物に関わる存在なのです。
そうすると、事象の客観的判断と施工方法をよく吟味し選択する必要がある事に気づきます。
この気づきは思いやりであり責任です。
ここに修理と修復の違いの原点があります。
施工者は常に謙虚な態度で対象物に向き合い、時間や自分の知識不足などの外的要因で対象物にストレスをかけることが無い様にしなければなりません。
これから先に別の修復家が再度修復した時に、前修復時の部分までさかのぼって作業する事が出来る施工内容と使用材料なのか、見られて恥ずかしい仕事をしていないか繰り返し自問自答しなければいけないと思います。

この写真は張替えで入庫したヌーボー期の椅子でゆるんだジョイントを外部からスクリューで補強された例です。
この状態ですとジョイントがボックス内でスクリューによって貫かれ割れているている事が考えられます。
椅子の座のジョイントは常に荷重がかかります。
スクリューは結束保持力が高いとはいえやはり使用時間や状況によっては緩んできますのでこの先の事を考えると分解してジョイントを再生する必要があるのではないかと思います。


 現実と理想の狭間
これは一体何かお分かりになりますか?実はこれはアンティークチェアーのクッションのダストなんです。
アンティークの椅子の場合クッション使われる素材は100%天然素材です。主にファイバー系の藁、麻、草、コットン、動物系では馬毛などが使われます。
これらの素材は経年変化で劣化すると共にクッションとして荷重に耐えてきた事により少しずつ壊れて行きます。それらは最終的には座の底部に体積します。
時には椅子の底部の布が破れ漏れ出すこともあります。このダストはハウスダストのアレルギーのある方には不都合な事実です。
この話を聞くとなんだそれではアンティークの椅子は止めておこう!アンティークのオリジナリティーは損ないたくないから座の張替えも出来ない!と思われるかもしれません。
そこでアンティークを持つことの理想と現実の狭間で悩む事になります。
私の経験からお話をさせていただければアンティークの多く椅子の場合今までに何度も張替えを経験しているものがほとんどでオリジナルのままで現在に至っているケースは稀です。
つまるところソフトファニッシングに関する部分は消耗品でクッションがだめになったら替えても問題は無い!という事になります。
アンティークチェアーでこの手のお悩みをお持ちの方は多いかと思います。馬毛で編んだ物や手織りの織物など特別な張り地布の場合は別の対処をいたしますがそうでない場合は張り替えても椅子の価値を大きく変えるものではないとお考えいただいてもよろしいと私は考えます。
なぜなら家具は人の奉仕することが役目なのです。使う事で家具は長持ちするのです。


 ゲーテの詩
今日よりこのページを始めさせていただきます。皆様と共により良い未来に向けて考えていきたいと思います。内容が稚拙であったり一般常識に照らした時に事実と違う場合も多々あるかと思いますがご指導いただければありがたく存じます。

ゲーテの詩集にある詩の一節をご紹介したいと思います。

【花を与えるのは自然、編んで花環にするのは芸術】

この詩の一節は人が美を理解する動物であり芸術は作られる物であることを気づかさせてくれます。
人は猿とは違う進化を遂げて現在に至っているのを証明しています。
私たちは日常の生活の中で目の前の仕事や家事に追われ、道に咲く野の花の美しさや音楽、お芝居や芸術作品などからのメッセージを見過ごしやすくなっているようです。
はたして全くそれらに触れることなく生活が成り立つでしょうか?答えはおそらくNO!ではないでしょうか、もしこれらが無かったとしたら社会は無秩序になり維持さえ不可能になるでしょう。
ローマ帝国が過去に広大な領土と領民を治めることができたのも芸術的な快楽を人民に与えた事も大きな要素の一つだとおもいます。
ローマ帝国の破滅は政事、軍事、経済活動、芸術的快楽の供与のバランスを失ったからでは、と考えてしまいます。
人は生活の中でこれらを必須の要素として繰り返し求め続けています。
おそらく人類がこれから先、進化がより進んだとしても変わる事は無いでしょう。
私たちは芸術をよりよく理解し生活の中で活用することで充実した日々を過ごせるのではないでしょうか。

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